2019年3月3日開催 英語「通訳者への道」アフターレポート

  • 2019.04.22 Monday
  • 17:12

3月3日(日)に開催された「通訳者・翻訳者への道」。第3部は、サイマル・アカデミーを修了し、現在はサイマル・ビジネスコミュニケーションズ(SBC)からの派遣で、コンサルタント会社の社内通訳者として活躍中の藤原めぐみさんに、「社内通訳者のススメ」と題しお話いただきました。司会者からインタビューするかたちで、派遣部門で藤原さんを担当しているSBCの佐藤も同席し、お二人にお話を伺いましたので、ダイジェストでお届けします。

 

藤原めぐみ 


〇ふじわら・めぐみ 米国4年制大学を卒業後帰国。2015年サイマル・アカデミー修了。展示会で通訳活動。食品メーカーの社内通訳者として2年間勤務した後、フリーランスに転身。現在はコンサルタント会社にて社内通訳者として勤務中。

 

 

第3部 英語「通訳者への道」

 

 

司会 「通訳の学習をする中で、大変だった点は何ですか。どうやって克服されましたか?」

 

藤原さん 「私は楽観主義で、やればできると思っていましたが、進級がなかなかできない時期があったときが大変でした。そんなとき、この「通訳者への道」セミナーに参加し、百木先生(通訳者養成コース講師:百木弥生さん)の講演を聞いたんです。現在トップで活躍されている百木さんのような方でもスランプで成績が伸び悩んでいた時期があったと聞いて、頑張ろうと思いました。また、井戸先生(通訳者者養成コース講師:井戸恵美子さん)が担当されるインターネット講座「通訳者が教える英語力アップ講座 上級」を受講したことも、ブレイクスルーのきっかけになりました。

 

司会 「藤原さんは在学中から、通訳の仕事を始められましたが、学びながら仕事をする利点についてお聞かせください。」

 

藤原さん 「利点は、仕事で学ぶ英語がどんどん入ってくることです。例えば、会社の上層部の発言に対して現場が抵抗することを“pushback”と言います。このような表現は教室では学べないので、「生きた英語表現」が学べます。そして、現場で覚えた表現をアカデミーの授業で使うことで、自分に定着させることができると感じました。」

 

 

司会 「通訳学校に通って、専門訓練を受けて良かったことは何ですか?」

 

藤原さん 「自分の力に自信がついたことです。在学中に、初めて展示会の通訳をした時は通じているか不安でしたが、食品メーカーで通訳業務を始めて1年くらいたったころ、今まで呼ばれていなかった会議に呼ばれて上手にパフォーマンスできるようになり、成長を感じました。また、当時の同級生とは今でも交流し仕事の紹介などしてもらっており、通訳者の人脈ができることも魅力の一つです。」

 

SBC佐藤 「企業側は派遣スタッフに「専門訓練経験」を条件とすることが多いです。「英語ができる=通訳翻訳ができる」ではなく、留学経験や帰国子女であることも必須ではないです。訓練を受けている人と受けていない人の違いは、リスナーを意識してパフォーマンスをするかどうか。結局、経営トップや国際会議の通訳をできるところまで行けず頭打ちになるのは、訓練未経験の人です」

 

司会 「この講演のテーマでもある社内通訳を薦める理由は何ですか?」

 

藤原さん 「フリーランスは経験がないと雇ってもらえないですが、その意味で派遣は比較的ハードルが低く、仕事を得やすいです。社内通訳は、派遣か正社員としての勤務になるので、収入が安定するのはありがたいです。 組織に属しているので、一定の仕事量をこなせることから、スキルアップにも繋がります。また、自分が勤める業界について深く学べること、通訳のイロハを同僚、先輩から学べることが挙げられます」

 

SBC佐藤 「藤原さんのおっしゃるように、ひとつの企業で通訳をするとその企業の仕組がわかります。また、通訳パフォーマンスへのフィードバックが現場からすぐに得やすいのも、社内通訳をするメリットの一つです。そこで自身のスキルやパフォーマンスを客観視することができます。」

 

司会 「最後に、会場の皆さんにコメントをお願いします」

 

藤原さん 「好奇心を持ってチャレンジし、いろいろな知識を吸収してください。一歩踏み出す勇気も大切です。通訳デビューする機会を逃さず、話があればやってみること。初めて通訳業務を引き受けるには、自分のスキルへの自信が必要ですが、その自信は訓練を受けて、スキルを身に付けているからこそ生まれます。分野としては、IR通訳を経験することをお勧めします。投資家向けに企業の業績や事業計画を通訳するので、その企業、業界を深く知る必要がありますし、視野が広がります。あとは、目、耳、のどは商売道具なので大切にしてください。

 

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通訳を学んでいく中で、スランプを乗り越え、着実に力をつけてきた藤原さん。現在の通訳者としての活躍は、たゆまぬチャレンジと努力に裏付けられているのだと実感しました。ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。

 

2019年3月3日開催 英語「翻訳者への道」アフターレポート

  • 2019.04.22 Monday
  • 09:48

3月3日(日)に実施されたセミナー「通訳者・翻訳者への道」。第2部の登壇者は、サイマル・アカデミーの講師を務める、英語翻訳者のPaul Warham先生。「直訳からの脱却 -AIに仕事を奪われない翻訳とは-」をテーマにお話していただきました。 

 

第2部 英語「翻訳者への道」


講師:Paul Warham


○ポール・ウォラム イギリス出身。『ドラえもん』に惹かれて日本語学習を始め、オックスフォード大学、ハーバード大学で日本文学を研究。英語の旅行ガイドブック記者、翻訳会社勤務を経て、現在はフリーランス日英翻訳者として実務翻訳から出版翻訳まで幅広く活躍。

 

 

機械翻訳のしくみ


冒頭、「以前は翻訳者というと周りは興味を示したが、最近は将来を心配されることが増えた」とウォラム先生。機械翻訳の普及とAI技術の発展により、今後人間による翻訳の仕事はなくなるのではないかと危惧される中、「機械翻訳と人間の翻訳は、そもそも訳し方が違う」ことを指摘しました。それを表す例文の一部を紹介します。

 

例文)ファッションもカルチャーも常に流行の先端をいく街、渋谷。

機械翻訳)Shibuya is a city where fashion and culture always go trendy.

 

一見問題なく訳されているように見えるかもしれません。しかし、実は二つほど問題が。一つは、”Shibuya is a city”というフレーズです。渋谷という地域は、例えば東京や大阪と同じ括りではなく、あくまで”part of city”であって、”city”という訳は誤り。機械翻訳でこのように訳された原因について「街」という単語を指し、「渋谷が正しくは”area”であることまでは考慮せず、データベースから合致する単語を拾い、そのまま置き換えている可能性がある」と推測しました。

 

二つ目は、”go trendy”という言い回し。ウォラム先生曰く、「”fashion”、”culture”、”trendy”の単語で英語ネイティブでも文章の内容を想像できる可能性はあるが、”go trendy”という英語は聞いたことがない」。これも「街」=”city”と訳されたプロセスと同様、「流行」=”trendy” 「いく」=”go”と直訳し、「それらを繋ぎ合わせたのでは」とのことです。

 

 

人間翻訳のしくみ


機械翻訳がいわば「言葉と言葉の置き換え」だとして、人間の翻訳はそれとどう違うのでしょうか。ウォラム先生はそれを、アメリカの日本文学翻訳者であるジェイ・ルービン氏の言葉“The aim of the translator should be not to translate the words but the meaning behind the words.”を引用し、「その文章の背景となるもの、すなわち筆者がその文章によって何を伝えようとしているのかを訳すこと」だと説明しました。

 

それを示すものとして、先ほど紹介した”Shibuya is a city〜”の人間翻訳の例を見てみましょう。

 

例文)ファッションもカルチャーも常に流行の先端をいく街、渋谷。

人間翻訳)Artistic shots of Shibuya's iconic crossing continue to feature on the pages of global fashion and travel magazines, and for good reason.

 

機械翻訳より文章が長いとまず感じると思いますが、それは「読者に文脈が伝わるよう説明が追加されているから」。そのために「読者を想像しながら訳されている」とし、「想定された読者は恐らく、これから日本に行く予定のある人で、まだ日本の知識が浅い人」とのこと。それが分かるのが、”iconic crossing”という表現です。日本に詳しくない人でも、渋谷のスクランブル交差点が渋谷の象徴的なものであるということが伝わるよう、"iconic"という表現で説明しているのです。

 

さらに、機械翻訳では意味の通じにくかった”go trendy”という言葉も、人間の翻訳では英語ネイティブも自然に読めるよう訳されています。

 

***

実際にいくつかの例文を見て、機械翻訳と人間翻訳の訳し方の違いに納得しました。現時点での機械翻訳は、正確性に欠ける部分や、不自然な表現によって混乱を招き兼ねない印象がある一方、読者を想定をした上でその文章の意図を訳す人間翻訳のきめ細やかさが一層印象に残りました。

 

 

ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました!

2019年3月3日開催 中国語「翻訳者への道」アフターレポート

  • 2019.04.02 Tuesday
  • 17:14

3月3日(日)に実施されたセミナー「通訳者・翻訳者への道」。第1部の登壇者は、サイマル・アカデミーの講師を務める、中国語翻訳者の眦塚技卆萓検「プロ翻訳者に求められる力」をテーマにお話していただきました。

 

講師:眦塚技


○たかだ・ゆうこ 大学卒業後、商社勤務を経て、中国語通訳・翻訳業に従事。サイマル・アカデミー中国語翻訳者養成コースコーディネーター。桜美林大学非常勤講師、法政大学兼任講師を務める一方、実務翻訳者の後進指導・育成に注力している。


 

訳文を検証する力


翻訳は一人で作業するものだからこそ、自身の訳文を客観的に見て推敲や検証する力が不可欠です。そのためには、なぜその訳文になったのか、どのようなプロセスで訳したのか、根拠は明らかか、を記憶しておくことが望ましいとのこと。精度の高い翻訳をするためには、厳しい目を養っていくことが重要なのだと感じました。

 

さらに、翻訳に求められる力として、実務翻訳の原則についても言及されました。常用漢字や文末処理統一など、多くは常識的なことでも、知っているのと知っていないのとは大違い。知らないと翻訳者としては失格だそうです…!基本的なことだからこそ押さえておきたいですね。

 

他に、ビジネスマナーについても触れられました。翻訳者は専門的な職業のため、ビジネスマナーはそれほど重要ではなさそう、とイメージする方もいるかもしれませんが、特にフリーランスとして働くうえでは基本中の基本。まずはメールの文面やスムーズな連絡の取り方で信頼を得るというほど重要なのだそうです。

 

 

翻訳の訓練を受ける意義


サイマル・アカデミーで講師をしている眦沈萓検3惺擦破殘の訓練を受ける意義について、以下のことを挙げられました。

 

・的確なフィードバックを得られる

・具体的なスキル指導を受けられる

・多様な表現を知ることができる

・講師及び受講者間の情報交換ができる

 

特に、第三者から訳文のフィードバックを受けることは、上達への大きな鍵です。以前受講生から、「モチベーションの向上と緊張感を得るために翻訳の仕事を引き受けているが、フィードバックがない」という話を聞いたとき、先生は、まだ学びの途中である学習者がフィードバックを得られない翻訳をしても上達には繋がらないとして、学習に専念するようアドバイスしたのだそうです。学習よりも経験を積むことがプロへの近道と思われがちですが、通学中はプロから指導を受けられるという特権を活かし、学習に集中する方が自身のためになるのだな、と納得しました。

 

来場者アンケートでは、「具体的に必要なスキルが分かった」「経験に基づいた実用的なアドバイスが聞けた」、など好評をいただきました。当日お越しいただいたみなさま、ありがとうございました!

 

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参加者の方々にいただいた質問と眦沈萓犬硫鹽をいくつかご紹介します。

 

Q:通訳者・翻訳者に共通する資質と自己研鑽について教えてください。

A:共通するのは「丈夫な体と柔軟な心」。どんな仕事にも共通しますが、健康であること、健康管理ができることは非常に大切です。フリーランスは、どこへ行っても周りは「他人ばかり」、精神的にキツイことも多々ありますが、そのような環境の中で仕事をし続けるには柔軟な心が必要だと思います。自己研鑽は必須条件。どんなことにも好奇心を持ち、知識を得ることに楽しみを見つけることができれば、頑張り続けられます。

 

Q:自分の能力をアピールするにはどうすれば良いですか。

A:まず、自分の能力を把握できているか、です。客観的な評価を得た方が良いと思います。アピールする方法などという小手先のことを考えず、自分の現在の能力を見極め、どのような学習がどれくらい必要かを考え、仕事をしているのであれば、どのような仕事でも誠実に確実にこなし、他者の評価と信用を獲得することが大切かと思います。

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2018年8月26日開催 英語「通訳者への道」アフターレポート

  • 2019.02.01 Friday
  • 11:10

8月26日(日)に開催された「通訳者・翻訳者への道」。第2部は、サイマル・アカデミーの講師も務める有田勇一郎さんをお迎えして「駆け出し通訳者としての喜びと課題」と題し、通訳の魅力や現場での課題についてお話いただきました。

 

第2部 「通訳者への道」

 

講師:有田 勇一郎 


ありた・ゆういちろう 小学校と高校の後半をアメリカで過ごす。米ジョージタウン大学卒。帰国後、外資系企業に20年勤務。2014年10月よりサイマル・アカデミーで通訳訓練を始め、2016年10月にフリーランス通訳者となる。現在、サイマル・アカデミーの「通訳準備」クラスを担当。

 

 

●50代で通訳者に転身


52歳で外資系企業のサラリーマンからフリーランス通訳者へ転職された有田さん。安定した生活から突如、それまでのポジションが無くなるという「リストラ」の憂き目に遭われたのです!急に職を失い今後のキャリアを模索していた中、得意の英語を活かした「通訳」の仕事に興味を持ち、サイマル・アカデミー通訳者養成コースに通学を始めました。

 

●サイマル・アカデミーでの学び


講師からは、現場での立ち振る舞い方や失敗談など、通訳スキル以外の事柄についても学んだという有田さん。クラスメイトとは、授業前に互いにリテンション(注)の練習をするなど交流を深め、それぞれが通訳デビューした今でも仕事の情報交換をしているそうです。このように、現場で役立つ実践力が身についたり、通訳者の仲間ができるのは、独学では得られない、学校に通うことのメリットではないでしょうか。

 

(注)リテンション:聞き取った情報を一定時間記憶し、聞いたとおりに繰り返す練習。語彙力・表現力の向上につながる。

 

●通訳の魅力は「世の中が広く見えてくる」こと


アカデミーを修了し、晴れてフリーの通訳者としてデビューされた有田さんですが、日々業務を続ける中で感じる、通訳の魅力についてお話くださいました。「その場でクライアントから感謝してもらえる」「組織に振り回されず自分の腕一本で勝負できる」「定年がない」などいくつか挙げられましたが、中でも印象に残ったのは「視野が広がり、世の中が広く見えてくる」という点です。

 

 

一つの業界で働いていたサラリーマン時代と異なり、通訳者は日々新しい業界、領域に関する案件に接します。そのため、準備のために常に勉強して、新しい知識を吸収していくことで、ご自身の視野が拡大し、日々成長しているのを感じるそうです。逆に見れば、通訳者はどれだけ語学が得意でも、多方面に興味・好奇心を持ち、学んでいくことを厭わない人でなければ向いていないと思いました。

 

●通訳者としての課題


まず健康管理について。万一体調不良で現場に行けなくなり案件に穴を上げてしまえば、クライアント、エージェントに迷惑をかけることになり、ひいては今後の仕事の依頼が無くなるということに繋がりかねません。その意味で、これまで以上に健康に気を遣うようになったそうです。

 

続けて、実際に通訳をしていて感じた点として、日本語と英語の言語構造や発想の違いによる訳出がいかに難しいかを、様々な例を挙げてお話くださいました。例えば「青信号」という日本語。これをそのまま「blue light」と訳しては通じません。正しくは「green light」ですね。どのような場面でも常に考えなくてはいけないのは「単語でなく、意味を訳す(=内容を伝える)」ことです。内容を聞いて、意味を理解して、頭の中で組み立て直してから訳す、この作業こそがプロの通訳者の腕の見せ所です。コミュニティの現場では機械翻訳やAIが力を発揮していますが、日本語と英語のニュアンスも踏まえて的確に訳出しなくてはいけない状況においては、生身の人間に敵わないのです。

 

●通訳者を目指す方へ有田さんからのメッセージ


英語が得意だからと言うだけでは通訳者の仕事は務まらず、学校に通って専門訓練を受けることが重要です。学校に通った上で、さらに日々練習を積み重ねることが大切です。毎日数分でもいいのでコツコツトとトレーニングを続けることが、通訳者としてのパフォーマンスを強化する方法だと思います。数年後、皆さんと通訳の仕事現場で再会できることを楽しみにしています。

 

 

駆け出し通訳者」として日々尽力されている有田さん。サラリーマン時代が長かったからこそ、その経験が現在のフリーランス通訳者としての仕事にも活かされているのかも知れません。多くの皆様、ご参加ありがとうございました。

 

2018年8月26日開催 英語「翻訳者への道」アフターレポート

  • 2019.02.01 Friday
  • 10:30

2018年8月26日(日)に開催した「通訳者への道 翻訳者への道」のアフターレポートをご紹介します。第1部は、サイマル・インターナショナルでインハウス(社内)翻訳者をされている杉山一樹さんの講演でした。タイトルは「人間翻訳の実務!一体どんな内容なのか気になるタイトルですよね。以下、講演の内容の一部をお伝えします。

 

第1部 英語 「翻訳者への道」


講師:杉山一樹


〇すぎやま・かずき 一橋大学経済学部卒業、上智大学大学院外国語学研究科修士課程卒業。東京銀行(現・三菱UFJ銀行)で資産運用業務、ドイツ銀行で証券保管業務、ステート・ストリート信託銀行で受託資産管理業務に従事。サイマル・アカデミー受講を経て実務翻訳者に転じた後、サイマル・インターナショナルのインハウス校閲・翻訳を担当。

 

 

★日本は珍訳大国!?


講演の冒頭では杉山さんから、公共の場所や日々のチェック(校閲)で遭遇した珍訳についてご紹介いただきました。例えば、体力作りのための「トレーニングセンター」の英訳が「training center」になっていたという例。一見するときちんと訳されているようですが、「training center」と訳すと意味は「会社の研修所」になってしまいます。この場合の正しい訳は「fitness center」です。

 

正しいように見えても実は全然違う意味になってしまう珍訳が、意外と身の回りに多くあります。翻訳は、単語を訳しただけでは本当の翻訳にはなりません。ただ単語を置き換えるのではなく、「著者の言いたいことを汲み取り、異なる言語で伝えること」が翻訳なのです。

 

 

★翻訳実務のキーポイント


日々チェッカーとして様々な訳文の校閲をされている杉山さん。難しい内容の文章に対し、訳文も難解になってしまっている例をよく見かけると言います。

難解な訳文は読み手にストレスを与えてしまうため、翻訳者は訳すだけではなく、読み手の立場になって訳文を考えることが大切。また、翻訳の作業を始める前に訳文の想定読者を確認し、訳文の文章の堅さや丁寧さを統一するなど、一見「当たり前」のことをきちんと確認することや、納品前にWordのスペルチェックや読み上げ機能を使用するなど、チェックに回す前に今一度自分の訳文の見直しをすることもとても大事です。

 

翻訳という仕事には、翻訳を始める前から納品をするまでの確認事項が多く存在します。翻訳はサービス業であるからこそ、こういった一つ一つのステップを踏み、訳文のクオリティを上げていくことが重要なのです。

 

 

講演を聞いて印象的だったのは、杉山さんが「翻訳は怖いものだ」とお話しされていたことです。チェッカーを担当していると「致命的な誤訳」に遭遇することもごく稀にあるそうで、誤訳に気づいて「お客様に訳文が届く前に気が付くことができて良かった!」と思うと同時に、「もし気が付けていなかったら、クライアントとの関係はどうなっていたのだろう…」とゾッとすると杉山さんは言います。翻訳は、翻訳者が訳しただけでは終わらず、チェッカーの校閲を経てはじめて納品されます。今回杉山さんのお話をお伺いし、チェッカーという役割の重みを改めて実感したセミナーとなりました。

 

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最後にQ&Aでいただいた翻訳の勉強に関する質問と、杉山さんの回答をいくつかご紹介します。

 

Q.翻訳者としてやっておくべき勉強法はありますか?

A.翻訳者として「これを勉強した方が良い」ということは特にないのですが、新聞を読むことをおすすめします。新聞のライターの方は日本語のプロなので、プロの文章から日本語を学べますし、日々新出する単語も学ぶことができます。実務翻訳に限らず、翻訳に携わる全ての方におすすめです。

 

Q.翻訳者になるために講座に参加するだけでは、勉強量が足りないと思いますが、自分でどのように勉強すればいいでしょうか?

A.例えばサイマル・アカデミーの場合、宿題がとても多く出ます。予習と復習が必要ですが、これだけでも膨大な作業量になります。平日にお仕事をされている方だと、土日のどちらかは、かかりきりになる量かもしれません。ですので授業に参加し、一生懸命予習・復習をすることで、十分な勉強量になると思いますよ。

 

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ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました!

 

 

2018年2月25日開催 英語「通訳者への道」アフターレポート

  • 2018.05.18 Friday
  • 13:52

2月25日(日)に行われた「通訳者・翻訳者への道」セミナー。第3部は、会議通訳者でありサイマル・アカデミーの講師も務める高畑美奈子先生が登壇されました。内容は、記憶に新しい平昌オリンピックでの通訳の仕事について。通訳者をめざす人にとっては関心の高い話題で、「オリンピックでの通訳に興味がある人パー」と呼び掛けると、参加者のうち約3分の1の手が挙がりました。ここでは当日の内容を一部紹介します。

 

第3部 英語「通訳者への道」

 

講師:高畑美奈子


○たかはた・みなこ 上智大学外国語学部英語学科卒業後、TBSに就職。報道および情報番組の記者として、外信部やNY支局勤務。退職後、サイマル・アカデミーを受講し卒業。現在フリーランスの通訳者。得意分野は外務省関連、労働関係、IR等。 

 

 

|「縁の下の力持ち」―オリンピックでの通訳の仕事について


オリンピックでの通訳の仕事というと、たとえば記者会見で有名選手の横について通訳をする姿を思い浮かべる人は多いのではないでしょうか。実際のところ、有名選手と仕事をする機会はほとんどないそうです。むしろそれ以外の大会準備や大会期間中の運営における通訳が多く、その部門はオリンピック全体で52種類にも及びます。たとえば、宿泊、放送サービス、交通、エネルギー、開閉会式、ドーピング検査、会場・インフラなど。通訳者はまさに競技の裏側を支える「縁の下の力持ち」といえます。

その各部門にて、会議(逐次通訳*/同時通訳*)や視察(ウィスパリング*/逐次通訳)、記者会見、レセプション、オブザーバープログラムなどの通訳を行います。今回の平昌オリンピックの期間中、高畑先生は現地でそのオブザーバープログラムの通訳に携わっていました。オブザーバープログラムとは、国際オリンピック委員会(IOC)が将来のオリンピック開催国や候補地の担当者に、その年の開催国が準備・運営している様子を実際に見てもらうプログラムです。

 

平昌オリンピックでのオブザーバープログラムは何か国もの担当者が同席することもあり、たとえば最初に韓国語→英語に訳し、それを別の通訳者が英語→日本語に訳すという「リレー通訳」の手法が用いられたそうです。屋内・屋外を問わない現場で、屋外の場合は川が凍るほどの寒さ。上下とも十分に着込み、聴診器のような形の簡易型通訳機材を使用しながら現地で奮闘する通訳者の方々の姿がスライドに映されていました。

 


 

 


*通訳の種類。たとえば「逐次通訳」は、話者がある程度まとめて話したものを整理して後から訳すこと。それぞれの通訳の種類について知りたい方はこちらをご覧ください。(サイマル・アカデミー コンテンツ「SIMUL CAFE」に移ります)

 

 

|日々の積み重ね


オリンピックでは、組織委員会から組織の名前やオリンピック独特の用語を説明した、100ページ近くにも及ぶ単語帳が通訳者に共有されるそうです。スポーツを始め、交通、エネルギー、医療など、部門の数だけジャンルも多岐に渡ります。にも関わらず、「たとえば来週どの分野を担当するのか、日にちが近付くまで分からない」ことに加え、「実際、その単語帳を持って会議に出席したとしても、その場で使うことはなかなか難しい」。それはあんまりでは、と思ってしまいますが、それでも最大限の準備をし、万全の態勢で臨むプロの仕事を痛感しました。

 

↑セミナー後に公開された、数十枚にも及ぶ高畑先生お手製の単語帳。

たくさんの参加者の方々が見て行かれました。

 

オリンピックに限らず、特定の分野に特化しないフリーランスの通訳者として活躍されている高畑先生の仕事内容は、普段からさまざまです。そのために、「日々アンテナを張り、勉強し続けることが大切」という言葉には説得力がありました。今回のセミナーでも事前に参加者の方々から質問をいただきましたが、中でも多かったのが「通訳者になるための勉強のコツ」について。これに対し、「実際はコツも近道もなく、とにかく毎日の積み重ねが大事。たとえば通勤・通学のとき、朝起きてから15分、就寝前の10分など、自分の生活に合わせて毎日学習し、続けること。」と回答しました。さらに、たとえばCNNを毎日観るとして、リアルタイムで観られない場合はポッドキャストで聞くなど、現代のツールを駆使した学習方法についても紹介していただき、「自分の生活に合わせた学習」の具体的な方法についても理解が深まりました。

 

 

明日の仕事が今日の続きならいいが、色々な分野の仕事があるので、今日は明日の分の勉強をしておかなければならず、毎日勉強が続いて行く。今通訳者になるための勉強を毎日続けらなければ、通訳者になってから続けることは難しい」。一見厳しい言葉のようですが、日々さまざまな仕事に携わり、オリンピックのような大舞台も影で支える姿を考えると、それほどの覚悟と努力が不可欠であることが伝わりました。

 

通訳者になる前は記者の仕事をしていた高畑先生ですが、通訳者になった今、仕事の醍醐味は「社会で起きていることと仕事が直結していること」と、「一方的に伝えるのではなく、言葉のキャッチボールの中に自分が介入していること」だそうです。通訳者になる前・なった後の厳しさと、国際社会における言語のかけ橋として活躍するやりがいを教えていただきました。

 

 

ご参加いただいた皆様、ありがとうございました嬉しい

2018年2月25日開催 中国語「翻訳者への道」アフターレポート

  • 2018.05.09 Wednesday
  • 12:10

2月25日(日)に開催された「通訳者・翻訳者への道」。第2部は、中国語翻訳者であり、サイマル・アカデミーの講師も務める眦塚技卆萓犬登壇されました。近年の中国語翻訳のマーケット事情や、学習する上で大切なこと等についてお話ししていただきました。

 

 

第2部 中国語「翻訳者への道」

 

講師:眦塚技


たかだ・ゆうこ 大学卒業後、商社勤務を経て、中国語通訳・翻訳業に従事。サイマル・アカデミー中国語翻訳者養成コースコーディネーター。桜美林大学非常勤講師、法政大学兼任講師を務める一方、実務翻訳者の後進指導・育成に注力している。

 

 

「好き嫌いなし」のスタンスが大切


来日中国人増加に伴い、ここ5年ほどはインバウンド対応が多いというお話から始まりました。ショッピングモールのパンフレットをはじめ、すでに来日したことがある「リピーター」観光客をターゲットにした、すし作り体験着物着付け体験などの日本語から中国語への翻訳で、そのジャンルは多岐に渡ります。

 

さらに、中国の市場に目を向けた企業からの依頼で、企業ホームページ契約書会社案内などの翻訳も多く見られます。また、中国語から日本語への翻訳では、中国(特に台湾)のオンラインゲームの翻訳が増加の傾向にあるそうです。

 

一方、従来から変わらないジャンルは、技術系の文書学術論文会議の資料講演原稿保険法律関係など。セミナーの第1部で、英語翻訳者は自分の強みである専門分野を身につけて仕事をしていくというお話がありましたが、中国語翻訳では比較的マーケットが小さいためか、「好き嫌いしていてはやっていけない」。どのジャンルにも対応できるようにするため、学習段階から「好奇心を持って様々な分野に挑戦する姿勢が大切」です。

 

 

学習を生活の一部にする


では、ジャンルを問わずに対応できる力は、どのように習得すればよいのでしょうか。学習する上で大切なことについて、次のことを挙げられました。

 

1)原文を速く正しく読む。

2)特に母語の語彙や表現を豊かにする。

3)時間を意識しながら学習する。

 

1)については「最も基本的で最も大切」なこと。締切がある仕事のため、限られた時間の中で高いクオリティの訳文を仕上げるには必要不可欠といえるでしょう。2)の具体的な学習方法は、「原文を漫然と読むのではなく分析しながら読む」。翻訳は「通訳と同じくらい語彙力が必要」というお話もありましたが、原文を読む段階から常に「どう訳すか」を意識することが重要なのだと感じました。そして3)については、実は「翻訳者になってからも活きる」こと。締切や訳す分量、ジャンルを見て引き受けられる仕事かどうか素早く判断するために、普段から時間を意識しながら学習することが大切だそうです。「引き受けるかどうかを判断するのは自分」という言葉から、自分の力量を把握していなければできない仕事だということが伝わりました。

 

ここで、眦沈萓犬桓身で毎日実践されている学習方法についても紹介していただきました。

まずニュースを母語である日本語で読み、その後、関連記事を中国語でも読みます。「面白い・知っておきたい」と思った記事をプリントアウトして、原文を見ながら声に出して訳していくという方法。

 

声に出して読む理由としては、「書くより速い」ことに加え、「声に出して訳すと訳せないところが明白になり、自分を誤魔化せない」から。原文を一読する時、内容について「「大体分かる」ことと「全部訳せる」ことは全く異なる」というお話がありましたが、声に出すことでその分からない部分が明らかになるそうです。

 

学習は、「普段の生活に組み込む」ことが重要とのこと。意識して「何曜日に何を何時間やる」と決めたりせず、食事や洗顔のように当たり前のことにするのがコツのようです。学習者の皆様もぜひ試してみてください!

 

セミナーの後半には、当日配布した課題を使用してミニレッスンを実施。参加者の皆様が真剣にメモを取る姿が印象的でした。ご参加いただきありがとうございました!

 


参加者の方々からいただいた質問と、それに対する眦沈萓犬らの回答をいくつかピックアップしてご紹介します見る

 

Q. 最近はインターネット上で安価に依頼できる翻訳の仕事があるため、わざわざ学校に行って勉強をしなくても自称翻訳者として仕事ができるのではと想像してしまいます。学校へ行って勉強した方が翻訳者として活躍するための近道になるのでしょうか。

 

A. 翻訳者には資格がないため、余計にそう感じてしまうのだと思います。スクールでは、どのような訳が求められ、評価されるかがすぐに分かるため、一定のレベルがあれば半年でもいいので通学することをおすすめします。また、同じ志を持った人が周りにいるということはとても心強いですし、励みにもなります。

 

Q. 中日翻訳の方が得意なのですが、中日に限定して仕事をすることは可能でしょうか。

A. 可能です。ただし、学習は中日と日中どちらもやっておく必要があります。翻訳者は翻訳だけでなくチェッカーの仕事もあり、中国語ネイティブが日本語に訳したものをチェックするのは日本人なので、そういう時に中国語の表現について判断ができないと困るからです。サイマル・アカデミーでもその状況を想定して、日本語ネイティブのクラスでは、日訳と中訳どちらも同じバランスで学習します。

 

たくさんのご質問をありがとうございました女

 

2018年2月25日開催 英語「翻訳者への道」対談 アフターレポート

  • 2018.05.09 Wednesday
  • 12:05

第1部「翻訳者への道」の最後は、パート1、パート2に登壇された成瀬先生と長島先生の対談が行われました。トピックは、産業翻訳と出版翻訳の違いや、仕事をする上での年齢制限はあるのかなど。当日の内容を一部ご紹介します。
 

パート3:成瀬先生×長島先生 対談!産業翻訳と出版翻訳の魅力

 

 

長島:まずは、産業翻訳と出版翻訳の違いについて。受講生の方によく聞かれるんですよ、「自分はどっちに向いているのか」と。この質問を受けた時、成瀬先生はどのように答えられていますか?

 

成瀬:財務諸表をよく知らないある受講生が居て、授業の3回目くらいの時に、転科を勧めたことがありました。「あなたはとても文章のセンスがあるから、こっち(産業翻訳)じゃなくて、長島先生の方(出版翻訳)に行った方が伸びますよ」って言って。後から聞いたら、彼女はその時非常に腹が立ったそうです。「捨てられた」「見限られた」と思ったらしくて(笑)。そこから、こいつを見返してやろうと思ったそうです。1年猛勉強したら、財務諸表すらすら読めるようになってましたね。「先生、二度と眼鏡違いをしてはいけませんよ」と言われました。というわけで、正直どちらに向いているかは分からないですね。

 

長島:私は、成瀬先生がパート1で仰っていたように、「やる気次第」だと思うんですよね。どちらに向いているかというより、どちらに興味を持って本気で勉強できるかを考えて選んでいただきたい。たとえば、「私は金融大嫌いです、勉強する気ありません」という人。それは私なんですけど(笑)、産業翻訳のクラスに行っても、半年しか続かないでしょう。だって興味ないんですもの。だけれども、興味を持てるようだったら本気で勉強する。それなら、今は何も知識がなくても続くと思います。

 

成瀬:両方できるっていうスーパーマンもたまにいますね。

 

長島:いますね。実際サイマルで講師をしていますから、会いに来てください。あと、勉強を始める年齢に制限はあるか、いつまで現役を続けられるか。これに関してはどう思いますか?

 

成瀬年齢は関係ないですね。スキルに関して言えば、ぐんぐん若竹みたいに伸びる人や、少しずつ伸びる人など伸び方に差はありますが、間違いなく伸びます。一番困るのは、「1年で翻訳者になれますか?」という質問。そういう人もいるし、3年かかる人もいるし、それはその人次第ですね。

 

長島:いずれにしても、勉強を始める年齢に制限はないですよね。

 

成瀬:はい。実際、定年退職してからサイマルに通学する方は多いですね。

 

長島:多いですね。「定年退職して時間ができたので、かねてから興味があった翻訳を勉強したいと思って受講しました」という方。しかも、経験豊富、知識もあるから、早い方だと1年から1年半くらいでプロになる方もいますね。いつまで現役を続けられるかについてはどうですか。

 

成瀬:私は少なくとも90歳まではやるつもりです。今63歳なんですけど、駆け出しだと思っていて、75歳くらいがピークなのかなと。まだまだ勉強することが尽きないので。

 

長島はい、頑張ってください。

 

成瀬:なんでそんなに冷たいんですか(笑)?

 

長島:定年はないと思います。気力のある限りだと思います。体力も必要だと思いますけどね。

 

成瀬:そう、体力。体力は本当に使いますね。

 

長島パート2で触れた菊池光は、亡くなる直前の85歳まで現役でした。翻訳という仕事が生きがいだからできたんだと今は思います。

 

成瀬:何歳までという発想はいらないと思います。生きてる限り現役

 

長島:同感です。先程パート1でもありましたが、翻訳業の将来についてはどうでしょう。自動翻訳やAI、今後の需要はどうなるのか。ご心配されている方も多いと思います。そのあたりはどうですか?

 

成瀬:産業翻訳に関していえば、激変期です。人工知能を使った翻訳が8割、残りの2割が人間翻訳で、それはこれからも変わらないと思います。今の翻訳事業の7~8割はなくなるんでしょうね。本当にできる人だけが残っていく

 

長島:出版翻訳でいうと、自動翻訳は全く使われていません。ですから、10年、20年は仕事があると信じています。ただ、自動翻訳もこれからどんどん良くはなっていきますよね。そのときに、自動翻訳と同等の翻訳しかできない翻訳者は淘汰されると思います。だって、安くできますから。人間にしかできない「心の翻訳」ができる人だけが残る。ただそのためには、それだけの力をつけなくてはいけない。ということで、サイマルで勉強しましょう(笑)!

 

成瀬:今の翻訳者が圧倒的に弱いのは、日本語の文章力ですね。

 

長島:英語のレベルが高い人は増えているんですよね。それに反して、特に日本語の文章力が下がっているのは、受講生の課題の訳文を見ていても時折感じますね。

 

成瀬:魅力のある良い文章を書いていただきたい。産業翻訳にとってはマストです。

 

長島:たまに、自分は文章力がないから産業翻訳をやりたいという人がいますが、それは間違いです。ノンフィクションでも産業翻訳でも、文章力は必要です。今後さらにレベルの高い翻訳が求められることを考えると、文章力を磨くというのはこれからますます重要になってくると思います。

 

成瀬:産業翻訳では、日英翻訳のニーズも高いです。英語が書けるというのはとても大事な能力で、英語がきちんと書けると、日本語もそれにひっぱられるんですね。だから日英翻訳もこれから頑張ってください。英日、日英どちらもできないと、産業翻訳の場合は生き残っていけないと思います。

 

長島:ひとつ聞きたいことがあるんだけど、翻訳をしていて、一番うれしいことは?少し明るい話題にしたいと思って。

 

成瀬:それは・・なんだろう。やってること自体ハッピーというか。長島さんも言ったけど、好きなんですよね。だから苦しくても毎日楽しいというか。

 

長島:うん。そうよね。菊池先生のこんなエピソードがあって。80歳過ぎた頃に、早川書房の編集者から「先生次はこんな本です」って新しい原書を渡されたんですけど、その時先生が、わーいわーいって手を挙げて喜んだのを見て、びっくりしました。100冊も200冊も訳してきた人が、また新しい本を受け取って、手を挙げて喜ぶなんてと思ったんですが、それほど好きだったんでしょうね。私はというと、自分の訳した作品を読んだ人が、ぞっとしたり怖がったり楽しんだり笑ったり泣いたり、そういう風にしてるかもしれないと思うと、本当に嬉しくなります。特に小説翻訳だと夢みたいなところがあって、このシーンでもしかしたら泣いてくれてるかな、と想像しながら訳すのが楽しいですね。

 

成瀬:お互い「楽しい」って言い合ってますね(笑)。

 

長島:はい(笑)。とにかく、翻訳が好きということですね。

 


将来的にますます質の高い翻訳が求められることの現実と厳しさが伺えた一方で、本人次第で生涯翻訳者として仕事をしていく力を身につけられるということと、お2人の翻訳が好きだという気持ちが伝わった対談となりました。当日お越しいただいたみなさま、ありがとうございました!

 

2018年2月25日開催 英語「翻訳者への道」アフターレポート

  • 2018.05.09 Wednesday
  • 12:00

「通訳者・翻訳者への道」セミナーが、2月25日(日)に開催されました。今回はセミナー始まって以来初の3部構成。第1部では、産業翻訳者でありサイマル・アカデミーの講師を務める成瀬由紀雄先生と、出版翻訳者であり同じく講師の長島水際先生が登壇されました。ここでは、第1部の内容を紹介していきます。

 

第1部 英語「翻訳者への道」

 

パート1:産業翻訳者への道


講師:成瀬由紀雄


○なるせ・ゆきお 商社勤務、高校の英語教師、編集業務などを経て、フリーランスの産業翻訳者に。サイマル・インターナショナル、タイムインク、大日本印刷などのクライアントを経由して官公庁、企業、大学等から多種多様な翻訳・人材教育・英文出版業務等に従事。2002年からはサイマル・アカデミー産業翻訳者養成コース講師。

 

 

やる気次第で道は開ける


成瀬先生が講師を務める翻訳者養成コースの最大の目標は、「生涯を通じて翻訳の仕事ができる翻訳力を獲得すること」。翻訳エージェンシーに登録することが最終的なゴールではありません。そのため、登録したその日から仕事ができるようなプログラムを提供しています。例として、一つの英文からいくつもの訳文を考えるトレーニングが挙げられました。訳文の選択肢を広げることで、「価値の高い」訳文を生む可能性を高めることが目的です。修了生の中には、翻訳者としてデビュー後、翻訳力の基礎を磨くために再び受講している方も。「学習」と「実践」を意欲的に往復することで、翻訳者になった後も翻訳力を伸ばし続けることができます。

 

また、多くの方が懸念する、今後の機械翻訳による影響についてのお話もありました。先生は、「機械翻訳を利用した大量処理案件」と「人間の手による高度な案件」に分かれていくと予想。特に前者は「翻訳市場の大半を占めることになるのでは」と予測しています。しかし、人工知能の発達によって「言語情報処理としての翻訳」、すなわち英文和訳が編集されたような翻訳が増加したとしても、その文章の本質を捉えた「心と心をつなぐ翻訳」は人間にしかできません。「人間の心を人間に伝えることができるのは人間だけ」という言葉には、深く納得させられました。

 

機械翻訳の影響に限らず、他にも年齢や経験、専門的な知識がないこと等を気にして、翻訳者になることを思いとどまる方は多いのではないでしょうか。しかし、これまで先生が受け持ってきた受講生は、70歳を超える方文学部出身で財務諸表という言葉も知らなかった方主婦や子育て中の方など実にさまざま。いずれも猛勉強の末に翻訳者になった方々ですが、少なくとも翻訳者への道の入り口は、年齢も知識量も経歴も関係ありません。本人のやる気次第で道は開けるということを教えていただきました。

 

 

 

 

 

パート2:出版翻訳者への道


講師:長島水際


○ながしま・みぎわ サイマル・アカデミーを卒業後、サスペンス、ミステリーを中心に翻訳を行なっている。サイマル・アカデミー翻訳者養成コース出版翻訳講師。訳書:コーディ・マクファディン「暗闇」、「戦慄」、「傷痕」、ノーラ・ロバーツ「真昼の復讐者」他多数。

 

 

翻訳との出会いと翻訳者への道


長島先生はサイマル・アカデミー修了生。翻訳者になる前は、大学などで英語の講師をしていました。職場の同僚に誘われてサイマル・アカデミーに通学し始めましたが、その時はまだ翻訳者をめざしていたわけではなく、「勉強してみようかな」という気軽な気持ちだったそうです。

 

そんな中、クラスで最初の課題が出されました。アメリカの投資銀行のエコノミストについて書かれたノンフィクションの翻訳で、先生の苦手な分野でした。あまりリサーチをすることなく提出し、添削付きで返却された「誤訳だらけ」の自分の原稿と、高評価だったクラスメイトの原稿を見比べて「唖然とした」と言います。英語が得意だと思っていたのは勘違いだったということに、その時気づいたそうです。

 

その後、「クラスで1〜3番くらいの成績になれるまでは頑張ろう」と一念発起。平日は仕事、休日はアカデミーという忙しい日々を3年半送り、ついに小説の翻訳をする話を、当時の講師である菊池光先生から持ちかけられました。その時手がけた本のジャンルは、数年前から好んで読んでいたという「ドロドロ・おぞましい系のロマンス」。430ページほどの分量を、半年近くかけて訳しあげました。やがてその本が出版された時の喜びは今でも覚えていて、「書店を3〜4軒回って訳書が平積みされているのを見に行った」そうです。

 

プロになるまでの、仕事をしながら学習を続けた3年半について、「大変ではあったが、勉強していくにつれて読解力や表現力が少しずつ伸びていることが分かった。それと、サイマルに通学して学習することが生活の一部になっていた」と振り返りました。だから続けることができたのだそうです。最後に、ゼロから翻訳者への道を進んだ先生は、「経験や知識は、最初はなくても大丈夫。でも、最初の一歩を踏み出さなければ何も始まらない。」という言葉で締めくくり、学習を始めようか迷っている方の背中を押しました。

 

 

 

 


セミナー後に取った参加者のアンケートでは、「学習に対する姿勢の大切さに気づかされた」という声が多く見られました。年齢や経歴、そして今後の重要など、不安に思うことはあるかもしれませんが、「最初の一歩を踏み出さなければ何も始まらない」ということと、「やる気次第」で力をつけていくことで、その不安要素を取り除けるということが参加者の方々に届いた回となりました。

 

パート1とパート2をそれぞれお送りしましたが、最後のパート3はお二人の対談です!

その模様は次の記事にてご紹介しています。ぜひそちらもご覧ください。

2017年8月26日(土)開催 『通訳者への道』アフターレポート

  • 2017.11.27 Monday
  • 17:48

2017年8月26日(土)に開催された、「通訳者への道」のアフターレポートをご紹介します。

登壇したのは、サイマル・インターナショナル専属通訳者兼サイマル・アカデミー通訳者養成コース講師の、池内尚郎さんです。「国際理解のファシリテーターをめざして」という副題のもと、実際の通訳現場の様子や、同時通訳をする上で大切なことについてお話くださいました。


池内 尚郎

上智大学外国語学部ロシア語学科で学ぶ。国際交流や国際政策に関わる仕事を経て、サイマル・アカデミーで学び会議通訳者に。政治・経済・文化・科学技術など、幅広い分野で活躍。現在は通訳者養成コースで会議通訳クラスを担当。

 

 

 

|実際の通訳現場


同時通訳*は専用のブースの中で行いますが、その環境は案件によって異なります。ブースが広く窓が大きい恵まれた環境だったヨーロッパ、反対にブースが小さかったインド、なぜかマイクや通訳機材を置く台が高いため、椅子を重ねて座らざるを得なかった中東、ブース自体がなく雑音を聞きながら通訳したスリランカなど、実際に出向かれた現場の写真を見せながら紹介していただきました。

 

中でも印象的だったのが、「Korean」「English」などのプレートが付いたブースが、ずらりと並ぶ一枚の写真。多言語の通訳が必要な現場では、言語毎に分かれたブースがいくつも設けられます。ひとつの発言がその場でさまざまな言語に通訳される現場を想像すると、不思議な感じがしました。

 

 

このように、ブース内で仕事をすることから見ても、通訳者は「目に見えず、聞こえるだけ」「裏方、黒子」と言われがちですが、通訳者こそ「国際理解のファシリテーターとしての自負を持って仕事ができる」職業だと池内先生は言います。そのエピソードとして、ある国連本部での仕事終わりに、日本代表団の方々が集まって記念写真を撮っている姿を収めた写真を紹介していただきました。「代表団の方々に、会議をやりきったと思ってもらえるような通訳ができたという達成感があった」と写真を撮った時のことを振り返られ、通訳者という仕事の醍醐味を見せていただいた瞬間でした。

 

* 話し手の発言を聞くのと同時に訳していく通訳のこと。通訳には同時通訳の他にも、ある程度発言がまとまった後に訳す「逐次通訳」や、通訳者が聞き手の耳元に囁きながら同時通訳をする「ウィスパリング」という形式があります。通訳の種類について詳しく知りたい方はこちらから。

 

|「単語ではなく意味を訳す」


通訳において重要なことは、「単語ではなく意味を訳す」ことだそうです。特に話者の発言にかぶせるようにして訳す「同時通訳」は、「分からない単語が出てきた時、意味を考える瞬間にはもう話が進んでしまう」というほど速いテンポで訳します。そのため、単語に気を取られず、話の内容を理解し、その意味を訳すのに重点を置くことが鍵となるようです。実際、ひとつの単語が分からなかったとしても、広い意味で理解していれば訳が出てくることはよくあるとのことでした。

 

また、同時通訳をする際は「言葉を節約」することが秘訣だとか。すなわち、短い文章で訳すということです。言葉を別の言語に訳すと長くなってしまうのが一般的ですが、聞き手にとっては言葉が短い方が分かりやすい。「意味を訳す」だけでも難易度の高い作業ですが、「聞き手がどれだけ理解しやすい訳であるかが重要」だと、訳を聞く側の立場にも立って仕事をされている姿勢がとても印象的でした。

 

 

資料に通訳現場の写真やユニークな画像が多く使われていたこともあってか、参加者の方々は常にスクリーンに注目されていました。こちらで紹介したトピックの他にも、AIと通訳者の今後や、通訳者という職業の歴史についてもお話していただき、内容の濃い1.5時間となりました。最後は"If you don't know where you are going, any road will get you there."という言葉を、「どこに行くかは分からないが、どこかにはたどり着く」という解釈で示し、結果がどうであれ努力は必ず無駄にならないと、学習に迷いを感じている方々にエールを送って締めくくられました。

 

第1部の「翻訳者への道」同様、こちらも参加者の方々からたくさんの質問が上がりました。

 

ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました!

 

参加者の声

・通訳者とはどういう仕事なのかをより深く理解することができた。

・通訳者の実際のお話を伺えたため、今後の学習に役立てられそう。

・とても楽しいお話だった。これから通訳者を目指すにあたって、

励みになる内容だった。

 

 

 

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